2021年6月3日に育児・介護休業法の改正が衆議院で成立しましたね。施行は2022年秋ごろとのことです。この変更は、男性育休取得を後押しする法改正になりそうです。
現行制度と比較して育休制度の変わるポイントをまとめていきます。また、実際に育休取得をした立場からの意見も添えてお伝えします。
育休制度変更点のポイントまとめ
とくに影響が大きそうな変更点を以下にまとめました。
現在(2021年時点) | 変更後(2022年秋から) | |
分割取得 | 原則できない ※パパ休暇制度で2回目が可能 |
可能 |
申請方法 | 1か月前まで 内容変更は原則1回まで |
2週間前まで 内容変更回数の緩和 |
必要な勤続日数 | 1年以上 | 制限なし |
事業主の支援 | 取得希望の確認は不要 取得状況の公表は不要 |
取得希望の確認義務化 大企業は取得状況の公表義務 |
変更内容から、柔軟な育休取得の推進をねらう意図が感じられます。1つずつ詳しく見ていきましょう。
育休の分割取得が可能
分割取得可能になる点が今回の一番大きなポイントだと考えています。
現行制度では、育休取得は原則1回。パパ育休で2回。
ただ、現行制度では育休を分割して取得することができず、1回のまとまった期間だけの取得になります。ですので、2回に分けて取得することができません。
特例として、「パパ育休制度」というものを活用すると実は2回育休を取得できます。
- 産後8週間以内に育休取得開始
- 産後8週間以内に開始した育休を終了
この2点の条件を満たす取得の仕方、要は産後すぐ~8週間以内で1回目の育休をとっておけば、その後好きなタイミングでもう1回育休を取得できます。
出産直後のサポートに加え、もう一度好きなタイミングで育休取得ができるので非常に有効な制度です。
ただし、8週間の間に一度育休を開始~終了しなければならないという条件がけっこう邪魔をしてきます。私が育休取得をもともと計画していたのは、
- 1回目は出産直後から12週間(3か月)
- 2回目は妻の職場復帰時
のようなタイミングでした。この場合パパ育休制度を活用しようとすると、「最初の8週間」に加え、「その後続けての2週間」と「妻の職場復帰時」という3回の取得とみなされてしまいます。そのため、「続けて2週間」と「妻の職場復帰時」どちらかしか選べなくなりました。
つまり、現行制度の弱点としては、
- 育休の分割取得が難しい
- 分割する場合、1回目は産後8週間までというきびしい条件つき
という、分割取得に柔軟性がない点が挙げられます。
制度改正で、産後8週間とその後の休業はそれぞれ自由に取れるようになる
今回の制度改正では、「産後8週間の休業」と「それ以降の休業」がまず別物として考えるようになります。なので、パパ育休制度のようなきびしい条件がなくなり、
- 産後8週間
- その後続けて2週間
- 妻の職場復帰時
と、さきほどは不可能だった柔軟な育休取得が可能な制度になります。
それぞれの家庭事情に合わせて、男性がほんとうに育児に参加しやすくなる、とても素晴らしい制度改正だと言えます。
育休申請方法の条件緩和
申請方法については、申請期限と内容変更の2点で条件が緩くなるようです。これは、育休取得を考えている方にとってはメリットになります。
これまでより、出産予定日間近に申請が可能になる
これまでは1か月以上前に勤め先に対して申請が必要でした。私もそのように申請手続きをしました。申請する時、出産予定日を基準に育児取得開始日を決めていましたが、「もし予定日から出産がズレたらどうしたらいいんだろう?」と不安がありました。わが子はたまたま予定日ちょうどに生まれてくれたので事なきを得ましたが、もし出産が早まった場合は数日間育休取得ができず、妻のサポートができない期間ができたはずです。
これが制度改正で、1か月前→2週間前に若干ですが申請期限が緩くなります。条件緩和なのでありがたいですが、正直なところを言うと2週間前でも出産予定日なんてどうなるか分かりません。
本音を言えば、女性の産前休暇のように、男性も出産前から休暇が取れる制度ができてくれれば余裕をもってスケジュールも組めるのにと感じてしまいます。
予定日からズレ込んだ時の修正がしやすくなる
今回メリットが大きいのは、申請内容の変更回数制限がなくなりそうな部分の方です。
予定日より陣痛が早まることは当然ありますし、陣痛が来てもそこから数日出産にかかる方も少なからずいます。そうした場合、一度は育休取得日を早めて、その後やはり遅くして、のような変更をしたくなりますが、現行制度では1回しか変更できませんでした。
そこが、2回、3回と変更できるように変わります。
変更回数制限がなくなることで、予定が変わることでの不安が取り除かれますし、1日単位で柔軟に育休取得開始日を変更できる柔軟さがあるため、とてもありがたい制度変更になります。
勤続日数の条件緩和
新卒入社の社員が育休を取りやすくなる
従来の1年間の勤務実績ありという制約のため、新卒入社の社員が育休を取るのは非常に難しいことでした。企業によっては支援制度を打ち出しているところもありますが、ごく少数です。
私の新卒入社時の同期でも、入社から半年経たずに出産された方がいました。その方は、育休も取りづらく、周囲の理解も得られなかったため、結局退職せざるを得なくなってしまいました。
入社してすぐ産休・育休というのは、抜けた穴を埋める周囲からするとあまり好ましくないのは分かります。ですが、出生率が下がる一方のこの国で、若い人が出産しやすくなるような制度改正は長い目でみてプラスになるのではないでしょうか?
有期雇用の契約社員なども育休を取りやすくなる
期間付きの契約社員の場合、1か所で1年以上働き続けることがなく、いろんな職場を転々とするケースも十分にあり得ます。そういった方が従来は育休を取得しづらい制度でした。
今は多様なはたらき方がありますので、色々な立場の方が育休を取りやすくなる制度改正は非常に有効だと言えます。
事業主の支援
男性の育休を言い出しづらい雰囲気が解消される?
今回の改正では、育休取得の義務化まではなりませんでした。
ただし、お子さんが生まれた方への育休取得希望を確認することが義務化されます。これによって、今まで「自分からは育休を取りたい!」と言い出しづらかった方が意見を言いやすくなるのではないでしょうか。
上司や会社のさじ加減になってしまいそうなのはマイナス
ただし、確認の義務化とは言っても、具体的な方法は会社ごとに任されてしまうはずです。そうなると、あまり育休に理解のない会社や上司からは「どうせ育休は取らないよね?」という確認の仕方をされてしまう恐れも十分あります。
やはり重要なのは、会社ぐるみで育休を支援する雰囲気や制度が作られることですので、育休取得を考えている方は、お勤め先の会社の育児支援がどうなっているかはよく確認しておいたほうが良いです。
まとめ
2022年の改正育休法により、今まで以上に多くの方が育休を取得しやすい制度になります。
昔のような一家やご近所ぐるみで子育てというのは現実的には難しいので、子育てのためにまずは親が仕事を休めること、またその間の十分な金銭的な援助が国からあることはとても大切です。そのような方向に国の制度が変わっていくのは喜ばしいですよね。
まだまだ育休取得はしづらい、とくに男性だと不可能に近い部分もありますが、ぜひ制度をうまく活用して子育てに参加していきましょう!