育児休業を取得される方でいちばん気になるのが収入面の部分ですよね。
- 育休の間、収入はどうなるのか?
- 生活できるだけのお金が保証されるのか?
など、心配ですよね。
私は男性として育児休業を取得しました。妻と夫婦同時に取得だったため、特に生活に困らないようにお金の部分を心配して事前にいろいろ調べていました。
ただ、実際に育休に入ったあとに、「もっと注意しておいたほうがよかった!」と思う点もありました。
そこで、これから育休取得される皆さんに向けて、私の実体験も交えた育休中のお金にまつわる話について詳しく説明していきます。
- 会社員で育休取得を考えている方
- 夫婦で育休取得を考えている方
- 育休中の金銭面に不安がある方
- 給付金などで、収入は思ったほどは減らない
- 数か月~半年分の生活ができる貯金をしておく
- 育休期間が半年を超える場合は注意
- 給付金の計算は自分でできるので、事前に確認しておく
- 育休を上手に使うと、節税効果もある
育休中の収入は減る?
期間が半年以内なら大きく減ることはない
まず結論としては、半年以内の育休であればふつうに働いていたときに比べて大きく収入が減ることはありません。
育休取得する前は、会社の先輩から「育休を取ると生活が苦しくなるからな~」という声を聞いたりしたので不安はありました。
ですが、育休取得期間の収入と、ふつうに働いていたらもらえたであろう給料を比較してみたら、大きく変わることはありませんでした。
それは、国から支給される育児休業給付金が、半年以内であれば大きな額で給付されるためでした。
給付金については、この後詳しく解説します。
期間が半年を超えると収入は減る
育休中の収入を支える最も大きなものが育児休業給付金ですが、休業期間が半年を超えると給付額が下がります。
ですので、半年以上の育休を取得する方は注意しておいてください。
半年分程度の生活費を貯金しておくこと
半年間であればトータルの収入は大きく減らない一方で、給付金が支給されるまでの無収入に近い期間ができてしまうのも事実です。
給付金などは育児休業を開始した直後にもらえるものではないためです。育休取得直後から毎月決まってもらえるお給料の感覚でいると、予想外に収入がなくて困るはずです。
実際私も、1、2か月分くらいの生活費を貯金しておけば良いかな?と思っていたら、予想を超えるペースで貯金が減っていったので少し焦ってしまいました。
とくに出産前後は特別出費が増える時期でもありますので、それも踏まえて多めに貯金しておかないと安心できないかもしれません。
- 育児休業を取得しても、半年程度ならトータルの収入は大きく減らない
- 無収入期間もあるため、多めの貯金があると安心
会社から給与はもらえる?
給与支給は会社の規定次第
基本的に育休期間中は会社からのお給料はもらえないものと考えておいた方が良いです。
私も、給与という形では支給されるものはありませんでした。
ただ、会社によっては、「〇〇日間までの育休中は、給与の〇%を支給します」と就業規則に記載があるケースもあるようです。
このあたりはお勤め先の会社ごとに違いますので、給与担当・人事担当の方に事前に確認しておいたほうが良いです。
また、給与が発生する場合、育児休業給付金が受給できなくなるケースもあります。(育児休業給付金の受給資格で詳しく解説します)
手当はもらえる?
手当も会社の規定次第
ここで言う手当は、会社から支給される一時金の事ととらえてください。
「出産祝い金」や「育児特別手当」など会社によって呼び名は異なりますが、出産~育休期間にかけて手当が支給されるケースもあります。
金額としては数万円程度がほとんどなので、あったらラッキーくらいに考えておいたほうが良いものです。
給与とあわせて、会社の担当部門に確認することをおススメします。
- 育休中の給与、手当は勤め先の会社規定次第
- 育休取得前に、会社の担当部門に確認しておくのがおススメ
育児休業給付金はもらえる?
受給資格が決められている
育児休業給付金には受給するための条件があり、厚生労働省が詳細に取り決めをしています。
詳細はぜひご自身でも確認していただきたいですが、大まかなポイントだけ挙げると、
- 原則、子供が1歳未満の間
- 自分が雇用保険に加入している(≒会社で保険証を作ってもらっている)
- 今の会社に約1年以上勤めている
- 育休が終わったら、今の会社に復帰する(≒転職、退職は考えていない)
- 育休期間中は勤務する日が基本的に無く、十分な給与も発生していない
といったところです。
新卒や中途入社で勤めてからの日が浅かったり、契約社員で雇用期間が定められている場合だと、難しくなってしまいます。
申請手続きは会社が行ってくれる場合も多い
給付金を受給するにはハローワークへの申請が必要です。
多くの場合は、事業主(≒お勤め先の会社)が代理で申請手続きをしてくれるようです。
ただし、育休期間が2か月以上の場合ですと、2か月ごとに追加の申請手続きが必要になります。
2回目以降の手続きの際、会社を通して必要書類の提出で良いのか、自分で直接手続き必要かなども含めて、会社の人事担当などによく確認しておくと安心できます。
支給額は、過去半年額の給与額と育休期間で決まる
給付額を決める計算式も、厚生労働省で決められています。
育児休業給付の1支給単位期間ごとの給付額(※1)は、「休業開始時賃金日額(※2)×支給日数(※3)×67%(ただし、育児休業の開始から6か月経過後は50%)」により、算出します。
…これを見てもよく分からないですよね笑
本当にざっくりの計算ですが、次のように考えると簡単です。
- 育休半年まで:過去6か月のお給料の合計÷180日×0.67×育休の日数 ※180日まで
- 育休半年以降:過去6か月のお給料の合計÷180日×0.5×(育休の日数-180日)
ここでのポイントは、「お給料」の額は、銀行に振り込まれる金額でなく税金などが引かれる前の総支給額だということです。
これは、基本給だけでなく、残業代や家賃補助などの各種手当もすべて含めた金額です。
実際にもらえる給付金の金額は?
例えば、次のような収入の人で考えてみましょう。
- 基本給25万円
- 残業代3万円
- 家賃補助2万円
- 合計のお給料=30万円/月
この人が、毎月まったく同じお給料をもらっていたとすると、
- 過去6か月のお給料の合計 = 30万円×6か月 = 180万円
になります。
育休を約1年間=365日取得すると、育休開始~半年間と、半年後~育休終了までの給付額はそれぞれ次のようになります。
- 育休半年までの給付額:180万円 ÷ 180日 ×0.67 × 180日 = 120万6000円
- 育休半年以降の給付額:180万円 ÷ 180日 ×0.5 × (365日-180日) = 92万5000円
これを1か月あたりの収入に換算すると、次のようになります。
- 育休半年まで:20万1000円
- 育休半年以降:15万4166円
これで給付額が分かりましたね!
お給料より給付額のほうが少なくない?
月収30万円の人が、半年間でも20万円ほどしか給付金をもらえないので「やっぱり少ないじゃないか!」と思いますよね。
ですが月収30万円でも、そこから所得税や住民税、社会保険料(いわゆる年金のことです)などの税金が引かれた金額が、手取り収入として実際に銀行口座に振り込まれることになります。
人によって税金の額は変わりますが、月収30万円であればだいたい22~3万円の手取りになるはずです。
ですので、育休開始~半年であれば、月2、3万円程度の収入ダウンとなります。
収入が減ってしまうことは確かです。
ただ、私は給付額を知る前は「収入が半分くらいになってしまうのでは?」と心配していたので、それよりは十分な金額が働かずしてもらえるので安心しました!
育休の節税効果とは?
税金や社会保険料が免除される
育休には節税効果がある!と聞いた方もいるのではないでしょうか?
先ほどもご説明しましたが、ふだんのお給料からは税金が引かれています。
ですが、育児休業給付金は非課税(税金がかからない)ため、所得税はかかりませんし、1年後の住民税も育休期間に応じて免除されます。
さらに、育休期間中は社会保険料を納める必要もありません。これは、年金を納めていないわけではなく、「育休期間中は社会保険料を払わなくても年金を納めたこととして扱うよ」という制度です。
給与明細を見るとわかりますが、こういった税金関係で毎月少なくとも1、2万円は引かれているはずです。
そのため、節税効果分と差し引きすると、給付金がもらえる金額はほぼお給料と同等の価値があると言えます。
ボーナスの月に育休取得するとより効果的
育休期間中は税金を納める必要がなくなるのは分かりましたね。
これは、ボーナス・賞与にも当てはまります。
もし育休期間中にボーナスの支給月が被っていた場合、ボーナスにかかるはずの所得税も0円になります!(住民税は翌年に免除なので、ボーナス支給時には引かれてしまいます)
ボーナスは金額が大きいので、人によっては5~10万円ほどの節税効果にもなります!
私は、夏のボーナス月にも育休を取得していたため、約7万円ほどの控除が受けられていました。ふだんはもらえる金額しか注目していませんでしたが、こうやって考えると税金って大きな額になることが分かりますね…!
育休でほんとうにお金が減るデメリットはない?
ここまで見てきたように、育休中の収入はほぼ保証されていることが分かりました。
ですが、育休が明けてからの収入や、銀行からの借り入れに影響が出るという、お金面のマイナスがあります。
復帰後のボーナス査定は減ることが多い
育休期間中は、会社的には当然「働いていない」期間になります。
ボーナスは、半年間の業績や「働いた成果」に対して特別に支給されるものです。
多くの会社では、標準のボーナス支給額に半年間の勤務日数を加味して支給額を決めています。欠勤が多いとボーナスが減るのと同じ仕組みですね。
たとえば、半年間育休を取ったとすると、夏冬2回ボーナスがもらえる場合、1回分のボーナスがなくなるようなものです。
金額が大きいので、この点は十分注意しておきましょう。
育休中は、住宅ローンの借り入れが難しくなる
お子さんが生まれると、一軒家やマンションの購入なども考えたくなりますよね。
わが家も育休期間中に物件探しをして、新居の購入を決めました。
その際に住宅ローンも組んだのですが、前年の収入は十分あっても育休中だと今後の収入が不安定と見なされ、ローンの査定を低く見られる銀行もありました。
とくに女性の場合や、長期間の育休取得だと、「ほんとうに復帰するのか?」を銀行から疑問に思われてしまうようです。
ローンをまったく借りられなくなるわけではありませんが、借り入れの限度額が低くなってしまうので、購入したい物件に手が届かなくなる人もいるかもしれませんね。
特に、金利が安いので借り入れ候補としていたネットバンクだと、対面での説明ができないのできびしく見られました。
また、育休を取得した翌年のほうがローン審査は難しくなるようです。
ローン審査で見られるのは前年収入で、その資料となるのが源泉徴収表ですが、育休中の給付金はそこに記載されないお金です。
つまり、育休取得した年の源泉徴収を見ると、ふだんよりも収入が低くなってしまうため、育休翌年のローン審査で不利になってしまいます。
出産に合わせた住宅購入を考えている方は、とくに注意してくださいね。
まとめ
育児休業中の収入減は誰もが不安に思う部分です。
給付金などで収入が保証されていること、税金の支払いが免除されることなどで、「これなら少しは安心して育休が取れるぞ!」と思う方が少しでもいるとうれしいです。
やはり、実際に男性で育休取得して育児に全力で参加すると、育休を取らなかった時と比べて、夫婦関係もお子さんとの関係も良い方向に変わると実感できます。
お金の問題はつきまといますが、制度を上手に活用して、みなさんもお金以上に価値のある家族の時間を楽しみましょう!
- 給付金などで、収入は思ったほどは減らない
- 数か月~半年分の生活ができる貯金をしておく
- 育休期間が半年を超える場合は注意
- 給付金の計算は自分でできるので、事前に確認しておく
- 育休を上手に使うと、節税効果もある